無名戦士OLのつぶやき VOL.4 「持つべきなのは」

おばんです。

10月も下旬の寒くなる季節、僕の中での大事件が起こった。

「何度やればわかるんですか?もう3年目ですよね?」

大声で怒鳴る上司、床のカーペットを見つめる僕。

どうやら理由は、僕の不手際による他部署からのクレームである。会議用のお弁当を発注する時間を間違えた上にお弁当の数も2個も多く発注してしまった事によるミス。

「あのね、無名さん。黙ってないで、返事くらいしなさい。」

そういって僕の肩を叩く。

ちょっと痛い。

「すみませんでした、お弁当代の余分の金額は私が対応いたします。大変申し訳ございませんでした。」

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その後に自分の席に着く、知らぬ顔でパソコンと向き合う同期の女、僕の瞳には彼女の口角が上がっているように思えた。

もともとは犬猿の仲である同期の彼女。研修のときも「自分は人と違っているし、成績も私が上だ」と見えないマウンティングを張る。

その瞬間僕のガスコンロが爆発した。

炎は天井まで燃え盛るように心が乱れ、目の前が見えなくなる。

「僕はダメだ、ダメなんだよ。」

すると次第に息が出来なくなった。

今日提出すべきプログラムもコードが2重に見える。

ダメだ、これはヤバい。感極まってトイレで引きこもってしまう。

携帯で助けを求めようと思ったが、そんな愚痴を聞いてくれる友人もいない。

 ちょっと休憩をして、仕事場に戻る。時計の針は18時を指していた。

「無名さん、今日はええわ。もう帰りなさい。」

普段なら「ラッキー」と思う僕なんだけど、この日は心が荒んでいて、涙と過呼吸が止まらなかった。

役員から「大丈夫?明日休みなんか?一回休んで、無名さんも元気で来てな。」と声をかけてもらったが「大丈夫です。」と言って、ダッシュで帰った。

帰る途中の信号で小雨が降る中、携帯を握りしめた。

誰かの声が聞きたい。誰か助けて。

バイクで帰っていたけども途中で雨宿り。すでに人が入居もしていない空家のテントでバイクを止めて、今日遊ぶ予定だった友人A君に電話をかけた。

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「もしもし?Aくん。今日はそっちに行けそうにないや。」

「え、あ、うん?どうした?エライぐじゅぐじゅやないの。なんかあったんか?」

「ごめんなさい・・・・、ごめんなさいぅううあああぁん」

「!?!?!?!どうしたんよう」

メイクとか髪の毛とかもう気にしていなくて、ただ思った事を口にした。

冷たい風がそっと肌を触る、熱暴走している僕には心地の良い風である。

「なにかあったかはわからんけど、おうちへ帰って布団に丸まってとことん寝なさい。気が向いたら連絡してくれ」

それだけ言われて通話を切られた。変な気もせずに、帰路に着く。

家に帰ると誰もいないリビングがなんだか寂しくて、リビングに置いてあるAIスピーカーに語りかける。ネットフリックスのテレビスティックリモコンを握り、好きな海外ドラマを一日中見た。

日曜日の昼、結局寝れずに海外ドラマを一本全部見終わった。

彼からは「おつかれ~」とメッセージだけしか入っていなかった。

不在着信が2件、彼でなく友人A君だった。

「無名ちゃん、やほみ~~いまなにしてんの?」

「ベッド。ここは現世か?来世か?」

「あほかw、ここは日本です。暇なら電話でもしなさいよ!」

ここ2日間、顔もシャワーも浴びずにいたから、さすがに臭い。

携帯をスピーカーにして、再び布団にもぐる。

「おはよ。気分は?」

「最悪。」

「だろうね。」

「今は辛いだろうけどさ、今は人生のしんどい時だと思う。彼とはうまくいってないんでしょ?彼にこのこと伝えてないんでしょ?僕たち、同族なの。みんなには私たちのことわからないと思うし、一生理解されない人種なんやと思う。だから、そんな深く落ち込まないで、あんたはクズでもなく、真面目で熱血な女なんやから。ね?またバーに遊びに来ればいいじゃないのよ。僕は逃げやしないわさ。パンケーキも焼肉もお泊りも全部しようよ。じゃあね。」

たった30分の短い通話だったけども、すごく救われた。

持つべきは友人って言葉本当に嫌いなんだけど、

友人をもって本当に助かった。大切にしないといけないと思った。

それは、きっと愛ではなく情だと。