無名戦士OLのつぶやき VOL.6 「好きな人は今日も誰かとセックスしてるって。」

『わたしさ、あのカメラマンと寝たんだよ。』

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数年前、冬の動物園前の通りにある串カツ屋さんでの時だった。撮影した後にモデルの彼女は細い目を串カツに向けて、語り出す。

『ちょっとさ私が寂しくなって勢いで、チューしただけなのにさ、相手からいいよがってきて、まじバカらしいよね。本当に男はバカだよね。ま、彼は顔イケメンじゃん?まぁ、セックスは悪くなかったし、体の相性まじよかったけど。まぁ当分はキープかな。』

彼女の軽率な戯言が僕の耳をざわつかせた。僕は両掌で耳を押さえ尽きて、シャットアウトするようにした。僕はいった。

『は?あんたはいいかもせーへんけど、聞いてるこっちはばりうざい。何?エッチしたから優越感に浸ってんの?その腐った性格叩き潰して卵子からやり直せよ。マジお前みたいな害悪女、嫌い。』

別に誰かとセックスをしたからとか優越感に浸らせたからとかじゃなく、単純に彼女の言動に許せなかった。あまりにも軽率でしかなからなかった。何よりも、大好きなカメラマンの男がそんな股のゆるい女の腟にいれて、出し入れして気持ちよく射精している事実が許せない。次々に誰かを抱いている事や何よりも撮影中にセックスしている事を嘘ついて「していません」って言っている事にも腹立たしかった。僕にも何回かチャンスがあったのに、抱いてくれさえもないし、むしろ眼中にないフリをしているのがうざくて仕方がない。別に今冷静になって思えば男女関係なんて、ザラにあることだし、第一、僕には関係ない。僕は号泣しながら、御堂筋線の地下鉄に向かう。ちょうど寒い時期だったから、あったかくなった頬をひんやりと冷やすのだった。

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貴方は好きな人や好きな物をぐちゃぐちゃに壊されたことはあるだろうか。

昔、両親の離婚前夜に父が作ってくれたしめじのお吸い物とキティちゃんのお茶碗に入ったタラコのふりかけ入りのごはんの味が忘れられない。だって作る父の後ろ姿が小さく見えて、別室で母が肩を竦めて泣いていたのを覚えてるから。母が実家に帰る時も僕たちの車が見えないくらいおっかけて手を振った父の姿にはじめて好きな人を母がぐちゃぐちゃされた記憶がある。僕の人生はつくづく、男に相手にされない人生を歩んでいたことに自信が気づかず一生懸命になった僕もあのカメラマンの男と一緒でつくづくアホだ。

最近はエロカメコがモデルの◯◯さんをセクハラしましたとか、オナニーを挑発する撮影を依頼されたとかちょくちょくみるけど、僕は信じない。なぜならモデルもモデルだからだ。だから僕はモデルも非があると思っている。これは間違っていない。否定的に文章をつらつらと書いて被害者ヅラするなら今すぐにでもモデルをやめて欲しいくらいだ。

人生に3回ほどぐちゃぐちゃにされたけど、母やモデルや大好きなカメラマンを最後まで憎まないようにしている。なぜなら、憎んだところで過去はもう戻らないからだ。そして何より、母やモデルや大好きなカメラマンの悲しい顔を見たくないからだ。軽率な発言も股のゆるい男女関係も許せないが、最後まで憎まないようにする。それが一番の幸せなのだ。

結局、僕が勝手に起こした劣等感と嫉妬の話。でもいつか、君たちが僕に嫉妬することがあれば、その時はいっぱい振り回してやりたいと思いながらもそのチャンスはない。その場面があったとて、僕の良心やめてしまう。

僕は常々、人に優しすぎる。本当はあの股のゆるいモデルも、大好きなカメラマンも優越感に浸ったあの発言も、被害者ヅラする素人モデルをも全部殺したい。殺せるものならね。だがしかし、僕はそのチャンスとて、やめてしまうのだ。

 

僕は僕をぐちゃぐちゃにさせながら生きている。好きな人は今日も誰かを抱いている事実に翻弄させながら、

 

それが本当に憎い。